2月初めに西周りの寒気が入り、数日に渡って西日本中心に大雪になった。その寒気が抜けるタイミングを見計らい、2017年2月13日に入山することにした。

初日は藤原岳に登るだけなので、時間には余裕がある。それでも少しでも早く山に入りたくて、朝6時発の新横浜始発のひかりに乗り込む。平日朝の東海道新幹線は、当然ながらビジネス客がほとんどだ。板を担いで名古屋方面に向かうというのは何とも不思議な感覚だった。新横浜で空席の目立っていた車内は、小田原、静岡と停車するにつれ、満席近くなっていく。のぞみの止まらない駅の利用者にとっては、この列車が名古屋方面に向かう始発列車なのだろう。

名古屋で近鉄名古屋線に乗り換える。ここからは下りだから空いているかと思いきや、通勤通学客で混雑している。物理的にも心理的にも肩身が狭い。切符は近鉄富田経由三岐線への乗り換えを通しで買うことができた。近鉄富田駅での三岐線へ乗り換えはホームを移動するだけ。一見すると他社線とは見えない造りだった。

三岐線は三岐鉄道が運営する私鉄線。藤原岳で産出されるセメントの輸送線として建設されたものと聞く。三岐鉄道には北勢線というナローゲージで有名な路線もある。三岐線の朝は完全なる通学列車だった。女子高校生がほとんどで、一層肩身が狭かった。のんびりローカル線の旅になったのは、学校のある駅を過ぎてからのことだ。

外を見やると、鈴鹿山脈には寒気による雪雲がかかり続けていた。最新の天気予報をチェックし、天候の回復がやや遅れていることを知る。上空の寒気がなかなか抜けきらないようだ。フレッシュな雪が楽しめるのはいいが、あまり視界が無いのも困る。何せ初めての土地なので、この地方独特の気象観というものは持ち合わせていない。ありのままの状況を受け入れるしかない。

終点の西藤原駅に近づくにつれ、山頂部の白が濃い、特徴的な山容の山が見えてきた。藤原岳だ。秩父の武甲山のように山頂部が石灰石掘削のために大きく削られている。ここ一帯は石灰質の土壌で、そのおかげで御池岳のテーブルランドも形成されているのだ。


最終的には乗客は僕ひとり。冬晴れの静かな田舎駅へ降り立った。

(つづく)

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